「ヤキトリ、大っ嫌い!」・・・by Yちゃん( 7 才)

ある朝、ニワトリ小屋で事件が起きた。
卵はいつも、一番取りにくい場所に産んである。
しゃがんで身を屈め、7才の小さな身体で一生懸命に手を伸ばして卵を取ろうとしたその時。
ヤキトリと名付けられたニワトリが、Yちゃんの頭を踏んづけた!

Yちゃんはショックで泣き出し、家の中に入り、泣きながら廊下を歩き、階段を上がって図書室へ。
心配して見に来た他のメンバーに、「ヤキトリに、頭踏まれたぁ~」と涙涙・・・。

その一件があって以来、Yちゃんは「ヤキトリ、大っ嫌い!」と怒っている。

 

ーー◆生かすのか、食べるのか。◆ーー

ASOVIVA!の子ども達が、ニワトリを飼い始めました。
日頃お世話をしているのは小学生の4~5名。

まだ成長途中なので断定はできないけれど、オスが一羽、メスが3羽と思われます。

フンの様子から病気を心配して動物病院や病理検査について調べたり、図書館で自然飼育の本を借りて来て、飼育環境や餌などについても調べました。

止まり木を設置し、落ち葉を集めに行って地面に敷き詰めました。
昼間は庭に放して運動をさせたり、触れ合ったり、みんなとても大切に可愛がってお世話をしています。

河南町には、美味しくて安全なこだわり卵で有名なタナカファームさんがあります。
ASOVIVA!のニワトリ達のエサは、タナカファームさんにお願いして同じものを分けて頂いています。

今はだいたい毎日2個、栄養価の高い安心な卵を産んでくれます。
子ども達はお互いに譲り合って、新鮮な卵を美味しく頂いています。

ニワトリには名前もついています。

・ヤキトリ(オス・茶)
・オコメ (メス・白)
・ダイフク (メス・白)
・チュウキチ (メス・白)

オスは大人になると「コケコッコー!!」と鳴き始めます。
ご近所の迷惑にもなるので、どうにかしないといけません。
いつか向き合わないといけないテーマです。

ニワトリは食べ物でもありますし、名前をつけて可愛がって飼っているペットでもあります。

子ども達も、それぞれに価値観、感じる心、考え方が違います。

「食べたい」派と、「生かしたい」派。

食べたい人は、しっかり太ってきたら食べることを楽しみに飼育しています。
生かしたい人は、寿命を全うするまで生かしたいと思っています。

自分も普段は鶏肉を美味しく食べているけど、愛着を持っている可愛いペットの首を掻き切って殺すなんて、心が痛すぎて受け止められないという人もいます。

どうにかして生かす方法はないかな?と調べて「声帯を取る手術をしたらほとんど鳴かなくなるらしい。」という情報を見つけ、獣医さんに問合せたりもしました。

命と食。
生かすこと、殺すこと。

どっちが正しいとかじゃない。
みんな違うことを認め合っているこのASOVIVA!で、何かしらの答えを決めなくてはいけない。
誰も、決めてくれません。

とうとう、決める日がやってきました。
4~6年生の子ども達が中心となって話し合います。

「俺は食べたいけど、でも、愛着を持ってたら辛いのも分かるから、その人達のことも尊重したい。これは真剣に向き合わないと。」

「メスは卵を産むけど、オスは食べないなら何のメリットのために飼ってるん?」

「声帯の手術はまだやってくれる病院がこの辺では見つかってないねん。」

「ネットの情報から考えたら、1羽でも1万円以上かかる手術みたい。その費用はどこから出すの?」

「生きててくれればいいんなら、どこかに引き取ってもらう?」

「わたしは食べたい。鶏の丸焼きめちゃくちゃ美味しいもん。」

「今飼ってるヤキトリをどうするかと、今後も孵化させたいなら絶対オスも生まれるから、今後のことも考えておかないと。」

「例えば、これから生まれてくるうちの半分は食べる、半分はどこかに引き取ってもらうとか?まぁ、命の選別をするということやけど・・・」

様々な意見を出し合い、がんばって決めました。

〇ヤキトリは、食べる
〇今後オスが生まれたら、半分は食べて、半分は引き取ってもらう。

生かしておきたかった子達は、それぞれに、

・「みんなが食べても、自分は食べない」

・「殺すところは見ないけど、一生懸命お世話をしてきた1人として、美味しく頂きます。」

と決めました。

それぞれが感じることは、ぜんぶ本当。
今の彼らが一生懸命考えて出したASOVIVA!としての決定と、その決定に対して自分はどう関わるのかという選択。

自分の軸を持ちながら、みんなと生きていくために、この体験が生かされていくと思います。

自分の運命を知ってか知らでか。
間もなく、ヤキトリ自ら〝その時”の訪れを告げる朝が、やってきます。

 

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